ドイツの暮らしをワンランク上げてくれる「市場」の存在
5月に入っても肌寒く、なかなか晴れない日が続いていたドイツ。
最近ではやっと気温も上がり青空も増えてきて、過ごしやすい季節になってきました。
晴れた日は、必ずと言っていいほど外に出て太陽の光を浴びたがるドイツ人が多く、友達と公園を散歩したり、テラス席でコーヒーを飲んだり、最近は日照時間が長くなってきたため、夜は外でビールを飲む人達もよく見かけるようになりました。
そんな中、季節に関係なく朝から多くの人が集まるスポットがあります。それは、毎週街の広場で行われている市場です。「市場」のことをドイツ語では「Wochenmarkt」(Wochen 週+Markt 市場)といい、通称「マルクト」や「青空市場」なんて呼ばれたりもしています。
晴れた日には、特に賑わいを見せる市場。今回は、そんな青空の下で行われた「ドイツの市場」の様子 をお届けしていきます!
初めてWochenmarkt(以下:マルクト)に訪れたのは、ドイツに来て数年が経った何気ない日のこと。その日の朝にあった用事が思ったより早く終わったため、いつもとは違う道を散策していると、広場に人だかりのようなものが見えてきました。「何だろう?」と思い、興味津々に向かってみると、そこでは活気に満ちたマルクトが開催されていました。
当時、いつもスーパーで買い物をしていた私が初めてこのマルクトに足を踏み入れた感動は、今でも鮮明に覚えています。
何より一番印象的だったのは、店員さんもお客さんも、皆が生き生きとしていて笑顔に溢れ、楽しそうに買い物していたこと。その日以来、マルクトでの買い物が生活のちょっとした楽しみの一つになっています。
マルクトへ行く楽しみはいくつもあるのですが、その中でも特に店員さんとの会話を楽しみながら買い物できることが最大の魅力です。
お客さんの中には「買い物リスト」や「食事の献立」を書いて持って来る人達もいて、それに合わせて店員さんに食材を選んでもらったり、調理法などを尋ねたりしている人達も多く見かけます。また、味がわからない野菜や果物などがある場合はその場で切って試食させてくれたり、常連さんには値段を少しおまけしてくれたり、一緒に順番待ちをしているお客さんと仲良くなったり、彼らの活気溢れるやりとりを直に目にすることでパワーをもらい、とてもポジティブな気持ちになります。
マルクトで買い物する楽しみは他にもあり、産地直送の新鮮な食材が手に入ることです。
魚を生で食べる習慣が少ないドイツでは、生でも食べられる新鮮な魚が買える場所は珍しいのですが、ここマルクトで売っている魚の多くは鮮度の良いものばかりです。
お店の常連になってくると「今日のオススメ」を教えてくれたり、店員さんに「生でも食べられますか?」と尋ねると、ドイツではSashimi(刺身)という単語が広く知られているため「Sashimiでもいけるよ〜!」などとハツラツに答えたりしてもらえます。こういうちょっとしたやりとりが何だか嬉しくて、またマルクトに通ってしまうというわけです。(笑)
また季節によって、その時々の旬の食材や季節の花など目で見て直接知ることができるということもマルクトで買い物をする楽しみの一つです。
例えば、今の時期だと「ルバーブ」や「桃」、そして「グリーンアスパラガス」や「ホワイトアスパラガス」などの旬の食材はどれも香り高くジューシーで、本当に美味しいものばかりです。また「ピオニー(芍薬)」や「アジサイ」など季節の花はとても色鮮やかに咲いていて、見ているだけで元気をもらえます。
特に旬の物については店員さんが詳しく知っているため、おいしい食材の見分け方や、これらがいつまでお店に並んでいるかなども教えてもらえます。
特にホワイトアスパラガスの収穫の時期は4月上旬から6月24日まで、と決まっているため、限定感が強く「今だけしか食べられないんだ!」と思うと、ついつい買いすぎてしまうことも。(笑)
スーパーマーケットはドイツでも至るところにあり、早朝から深夜まで営業しているためとても便利です。その利便性から私も学生の頃、いつもそこで買い物をしていましたが、初めてこの「マルクト」に足を踏み入れて以来、新鮮な食材、人とのコミュニケーション、さらにそこにいる人々の生活感を肌で感じられることが何より嬉しくて、頻繁に通っています。
同じもの一つ買うにしても、マルクトでは人の思いやりを感じ、そこからコミュニケーションが生まれ、買い物を通して思いがけない小さなドラマがある。そんなちょっとした楽しみが、今の生活に充実感をもたらしてくれて、大切な場所の一つになっています。
みなさんもドイツにいらした際はぜひ一度、足を運んでみてください。
実際のマルクトの様子は、こちらのYouTubeから見ることができます。
この動画を通して、現地で買い物をしている気分を味わってもらえたら嬉しいです。
(取材・文:久保田早紀)
【ドイツ Vlog】〜ドイツの暮らしをワンランク上げてくれる市場の存在〜 市場 / 買い物 / 新鮮な食材 / コミュニケーション / 白 アスパラ / ドイツ
久保田早紀 プロフィール
国立音楽大学附属中学校・高等学校を経て、同大学音楽学部演奏学科卒業、及び鍵盤楽器ソリストコース修了後、渡独。ケルン音楽大学大学院修士課程ソリスト科に入学し、ヤコブ ・ロイシュナー教授の元で 研鑽を積む。 同大学院 を最優秀の成績で 修了後、デ トモルト音楽大学にてさらなる研鑽を積み、2017年ド イツ国家演奏家資格を取得。
第28回ソレイユ音楽コンクールピ アノ部門にて第1位、及び音楽現代新人賞を受賞。東京文化会館にて受賞記念コンサートに出演し、ウィーン国立音楽大学夏期国際音楽アカデ ミー/ウィーン・プ ラハ・ブ ダ ペ スト(ISA)に奨学生として招待される。2013年イスキア国際ピ アノコンクール(イタリア)にて第1位を受賞の他、国内外のコンクール等で 多数受賞。日本学生支援機構(JASSO)より大学在学中の業績を認められ、平成22年度優秀学生顕彰文化・芸術分野奨励賞を受賞。
近年では、ポ ーランド にてToruń Symphony Orchestraとシューマンのピ アノ協奏曲を共演し、好評を博す。また日本のみならず、国内外にてソロ及び室内楽のコンサートにも多数出演。